ありがとう1000形―半世紀の歴史に幕をとじて

1973年から運行を開始し、静岡と清水を結ぶ輸送機関としての使命を果たすため、半世紀以上にわたり多くのお客さまと共に走り続けた1000形が、2024年6月30日をもって運行を終了しました。
これまでの感謝の気持ちをこめて、1000形車両導入の背景と共に、1000形に思い入れのある社員へのインタビューや1008号ラストランイベント当日の様子についてお伝えします。

1000形の概要

究極のメンテナンスフリーと耐久性を目指し、東急車輛製造に製造依頼して1973年から導入が始まった車両。当時国内で4社しか導入事例がなかったオールステンレス車体を採用し、静岡鉄道初の空気バネ台車やワンハンドルマスコンを装備しています。

1973年
4月25日、1000形運行開始
1975年
静岡清水線で電車のワンマン運転開始
1979年に導入された第9編成から冷房装置が装備(のちに1009号以前の車両にも冷房装置が搭載された)
1985年
1000形の全12編成24車両が導入完了
2016年
A3000形に置き換えが始まる
2024年6月30日 1008号の運行終了をもって、全ての1000形車両が引退

1000形が導入された背景

当時、自動車の増加により道路交通は麻痺状態になっており、これは特に都市部では、早急に解決を図らなければならない重要問題でした。
また、それまで鉄道業界は長らく陸上輸送において主流でしたが、マイカーの増加により、中小私鉄の輸送人員は減少傾向を辿っていました。そこで、静岡鉄道は昭和41年に新静岡にターミナルビルを設置し、路線バスとの結合輸送を実現。一部赤字路線を廃止してバス輸送に切り替える等、適切な経営措置を講じました。
そういった背景があったなか、静岡鉄道には、静岡―清水間の大量輸送をより安全に運行できる車両が必要でした。それまで使用していた鉄道車両は使用年数が長くなっていたことから、コストが増えるのを覚悟のうえで、お客さまを安全に運ぶという輸送機関の使命を果たすため1000形の導入に踏み切りました。

熊本電気鉄道とえちぜん鉄道への譲渡

静岡鉄道での運行を終えた1000形車両のなかには、他社に譲渡され別の地で再び運行している車両があります。1009号と1012号は熊本電気鉄道へ譲渡され、1010号はえちぜん鉄道へ譲渡されたのち「恐竜列車」としてリニューアルしています。皆さんが熊本や福井に行かれた際には、再び活躍している1000形の姿を見ることができるかもしれませんね!

画像提供:熊本電気鉄道株式会社
画像提供:えちぜん鉄道株式会社

1000形への想いを聞きました

1981年に静岡鉄道に入社後、10年間鉄道の運転士として勤務、その後も長く鉄道部に携わり2021年まで鉄道部長を務めていた北武忠さんに、1000形への想いをお尋ねしました。

すべての1000形が引退しますが、どのような感想や思いがありますか。

私が小学校4年生の時に1001号が導入されました。当時、沿線に住んでいて静鉄電車を利用していました。駅のホームで待っていて「ピカピカできれいな電車が入ってきたなあ」と思ったのを覚えています。まさか静岡鉄道に入社して自分が1000形を運転するとは思っていなかったです。長く1000形に携わってきたので寂しいですが、お客さまの1000形を惜しむ声を聞くと、地域の足として愛されてきたことが実感できて、嬉しく思います。

最も印象に残っているエピソードを教えてください。

一番は、やはり車両に冷房装置が搭載されたことです。当時は扇風機の車両が主流だったので、冷房装置の搭載は革命的でした。夏場にお客さまから喜ばれるのはもちろん、運転士にとってもありがたい装置でした。運転士時代に長沼駅のホームで乗務のため待機しているとき、冷房装置が搭載されている列車が来ると嬉しく思いました。

1000形のどの部分に愛着をもっていますか?

1008号は運転士の免許を取得する技能試験の際に使用した車両でした。1008号はブレーキのかかり方に癖がなく1000形のなかでは一番扱いやすかったので、その後も技能試験ではよく1008号が使われていました。他の運転士の方にとっても、1008号は思い入れがある車両なのではないでしょうか。

最後に1000形に一言お願いします。

長い間静岡鉄道と地域を支えてくれて本当にお疲れさまでした。熊本電気鉄道やえちぜん鉄道に譲渡された1000形車両たちは、静岡とは違う景色を見ながらゆっくりと走ってほしいです。

静岡鉄道 北武忠さん

ありがとう1008号ラストランイベント

1008号の運行終了にあたり、2024年6月30日(日)に新静岡駅と長沼営業所にてラストランイベントを開催しました。
イベントでは、1008号の引退セレモニーや引退を記念した特別グッズの販売、新静岡駅から長沼車庫に入庫するまでの臨時列車でラストラン運行を行いました。
当日は、1008号の最後の勇姿を見守ろうと、多くの地域の方や鉄道ファンが来場され、会場は長きにわたり静岡と清水をつないできた1008号への大きな拍手に包まれました。

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