第4回【秋葉バスサービス】「小國神社・開運線」開通!地域に新しい風を送るバス会社

静鉄グループのバス会社は4社ありますが、中でも最西端に位置するのが秋葉バスサービス。今から約130年も前の馬車鉄道をルーツにもち、現在は森町や袋井市を中心に県内西部の4市1町を営業エリアとする路線バスを守っています。2025年10月、森町が誇る遠江國の一宮 小國神社と袋井駅を結ぶバス路線を約50年ぶりに「復活」。長年、地域の生活の足を守ってきた路線バス会社が今、新風を巻き起こしています。

2023年、秋葉バスの社長に就任して間もない頃、森町の公共交通会議に出席した際に「小國神社を訪れた観光客が帰れなくなっている」と聞きました。その背景としては、神社までの公共交通がないことに加えてタクシー会社もないとのこと。以前は静鉄のバスが走っていたが廃線になったということでした。

素朴な疑問として「小國神社へ行くニーズはないのか?」「採算が合わない理由は何か?」を調査してみました。その結果「小國神社とことまち横丁(門前)は有名で、参拝客の多さからもそのニーズは極めて高い。しかしながら、公共交通がないことに加えて、新東名高速道路などが発達し、マイカーにとってはアクセス面が充実。そして、無料の大型駐車場が併設していることが、結果として繁忙期の大渋滞を引き起こしている」と推察できました。例えバス路線が開通したとしても、渋滞に巻き込まれる可能性が高いので実現は難しい、とも考えられました。

この状況について、小國神社や門前店、観光協会、商工会をはじめとする皆さんに説明しました。そして仮に、小國神社線を開通し成功させるために世の中にこの路線を周知するには、相当の資金と時間を要する、という課題を共有しました。
「やっぱり…そうか(可能性はあるのに諦めなければならないのか…)」「なんとか方法はないものか…」そんな想いがありました。ですが、路線バスは許認可事業。「必要だから開通できる」という簡単なものではありません。その路線の採算性、継続性、運行の安全性など、様々な条件をクリアしなければ運行許可が下りないのです。

「小國神社・開運線」開通に尽力した関係者の皆さん
開通式典では、安全を祈願して拝殿前で
車両清祓を執り行いました

そこで、関係者と協議した結果、国の支援制度「共創モデル:実証運行」を活用する方法で活動資金を確保して、実現に向けて模索を始めました。
つまり、条件付きのスタートでした。
この支援事業に応募したものの、森町の協力を得られず辞退することとなり、途方に暮れた時期もありましたが、静岡県でも同様の支援事業があることを知り応募したところ、無事採択されました。

地域の「共創」の象徴として制作したロゴマーク

小國神社 打田文博 宮司】
半世紀ぶりに待望のバスが復活しました。バス路線はいわば神社の参道ですので、秋葉バスをはじめ地域の関係者と協議を重ね、外装は紫紺色のラッピング、内装にもこだわり、神様への参拝にふさわしい格調高いデザインを施しました。神社のご利益にちなんで名前も「小國神社・開運線」と名付けました。
小國神社は縁結びの神様でもありますので、西部圏の素晴らしい観光資源をつなぎ、開運線開通を契機に、さらに周遊観光を盛り上げていきたいと考えております。

小國神社 打田文博 宮司
静謐さと敬意を想起させる紫紺色の
ボディが目を引くラッピングバス
神社参道を彷彿とさせる車内空間を演出

紅葉シーズンより一足早い2025年10月3日、安全運行を祈願する開通式典と出発式を行いました。プロモーションを兼ねたプレ開通のつもりでしたが、早くも予想以上の反響をいただき、神社への観光客はもちろん、ラッピングバスに乗りたくて利用するお客様も見られるようになりました。車内の装飾も評判上々ですし、記念乗車証や特別乗車券などのグッズも付加価値になっているようです。神社という目的地の性質に的を絞って、他の路線ではやらないことを徹底してやったことが功を奏したのだと思います。

年末年始にも運行を予定しておりますので、ぜひ多くの方にご利用いただきたいです。今後は観光の足として沿線の商業とのコラボも考えられますし、より遠くの新幹線掛川駅まで路線を延ばすことも考えていきたいですね。

出発式であいさつする山田光社長

★「小國神社・開運線」特設サイト
バスの運行情報や特別車両、グッズなどの情報がご覧いただけます。
https://okuni-jinja-line.akihabus.co.jp/

記念乗車証を小國神社でご提示いただくと、
こちらの記念御朱印をお受けいただけます。
※御朱印は本殿にご参拝後、初穂料を納めお受けください。
記念乗車証(左)と、
鳥居部分がフォトフレームになる特別乗車券

遠江國一宮 小國神社
遠江國一宮小國神社は静岡県の西部、遠州地方の森町一宮、本宮山の山麓より湧きでる清流一宮川のほとりに鎮座しています。創建から1470年、悠久の時の中で朝廷はもとより徳川家康をはじめとする数々の武将からの篤い信仰を受けるとともに、人々から「遠江國の守護神」として縁結び・厄除け・交通安全など古くから篤い信仰を集めてきました。 境内は樹齢300~500年の杉と桧の古木に囲まれ、四季折々に清らかな趣を見せ、特に秋の紅葉は多くの人々を魅了しています。
★小國神社ホームページ https://okunijinja.or.jp/

小國神社の紅葉の見頃は、例年11月中旬から12月初旬(写真提供:小國神社)

秋葉バスサービスの長い歴史と、その中で大切にしてきたものを、山田社長に語っていただきました。

この地域にはかつて鉄道がありました
秋葉バスサービスの歴史は1897(明治30)年に遠州森町で創業した「秋葉鉄道馬車株式会社」から始まりました。馬車鉄道は、道路に敷いたレールの上を馬が客車を引いて走ります。 大正初期に経営が静岡電気鉄道に移ると路面電車となりましたが、遠州森町から二俣線(現・天竜浜名湖鉄道)を経由、可睡斎なども経由して袋井駅まで「秋葉線」がありました。そして、袋井駅から御前崎付近を経由して藤枝までを結んだ「駿遠線」が軽便鉄道として走っていましたが、モータリゼーションの中で鉄道が廃線になり、秋葉線も1962(昭和37)年に乗合バスとしてその形を変えていきました。

明治時代の馬車鉄道
国鉄二俣線(現:天竜浜名湖線)
昭和37年に全線廃止になった電車
(写真提供:森町歴史民俗資料館)

静岡鉄道秋葉線と駿遠線の路線図

地元の営みを支えることが秋葉バスの使命
静岡鉄道が旧周智郡(森町・春野町)から要請を受け、遠州森町以北のバス路線の存続を目的に秋葉バスサービスを1996(平成8)年に設立しました。その後、秋葉中遠線や磐田線などの路線も譲渡される形で秋葉バスサービスの路線となっていき、現在があります。これらの経緯からも遠州森町を中心に秋葉街道沿いに暮らす皆さんの営みを支えることが当社の使命だと私も社員も自覚しています。小國神社・開運線のような観光路線もありますが、基本的には生活路線を守り続けることこそが使命です。

●これからも地域と共に
当社の営業エリア(4市1町※)は、人口減少が今後さらに課題となっていきますが、袋井市だけは将来的な人口減少があまりない自治体といわれています。このように各自治体を取り巻く環境は複雑になっていくことが想定されます。そして、バス会社も路線の存続にかかわる運転士不足の課題を抱えていますので、官民連携して互いの課題を共有できる環境作りをしていかなければなりません。私たちは、これからも地域の足として皆で働いていきたいと思います。
※浜松市(天竜区)、森町、袋井市、磐田市、掛川市

秋葉バスの一番のファンは、秋葉バスの運転士かもしれません。新人と超ベテラン、2人の名物社員に、仕事の面白さと会社の魅力を聞いてみました。

●とてもユニークな動機で入社を決めたそうですね
小さい頃に家の前を秋葉バスが通っていました。手を振ると運転士さんが振り返してくれて好きになり、あのバスを運転したいと当時から思っていたんです。富士重工の7Eという車種で、ボディは富士重工だけどエンジンはいすゞ製という今ではあり得ない車。30年以上昔の車種なので現役の車両は数少ないのですが、秋葉バスにまだ1台残っているのをHPで知ってからは、本社まで撮影に来て運転士さんとも顔なじみになったくらいです。高校を出たらこの会社に入りたいと考え、入社試験の小論文に「ナンバー2359(7E)に乗りたい」と書いて、社長からも「分かった」と言っていただきました。3年後に運転士になることを目指して、まず車の免許を取り、毎月静岡まで通って運転技術や接客マナーの研修を受けています。

●今はどんな仕事をしていますか?
本社でバスの運行実績のファイリングや定期券の販売などの窓口業務をしています。社内一若いので社長からInstagramの発信も任されています。趣味のバス撮影で磨いたカメラの腕を活かして、おだやかな森町の風景の中を走る様子や、バス会社の日常などを撮影し投稿しています。できるだけバスオタク成分が濃くならないよう心がけています(笑)。少し恥ずかしいのですが、リクルート向けに自分が動画に登場することもあります。

★秋葉バス公式Instagram
https://www.instagram.com/akihabus_service/

窓口では、緑の森を走る秋葉バスのほっこりするイラストが素敵な「バ朱印帳」と「バ朱印」も販売中!

●秋葉バスの良さは何ですか?
運転士も事務も全員顔の見える関係で、田舎な雰囲気がとても良いです。長く秋葉バスにいる先輩が、「一度ここに入ったら他には行けない」と言うほど。父親世代の先輩方もかわいがってくれます。バスのことだけでなくいろいろなことを教えてもらえるのがうれしいです。

大好きな「2359」の前で。「お客様はもちろん、バスにもやさしい運転士になりたい」と、バス愛あふれる河俣さん
窓口業務でお客様と接するのも楽しいひととき

「秋葉バス初の新卒採用となる河俣君。入社以来、積極的にどんな仕事も前向きに取り組んでおり、全社員から可愛がられています。彼の『2359を運転する』という夢を、全力でサポートしてあげたいと思います」と山田社長。期待の若手が育っています。

通学に利用していたお客様が、いま孫まで見せてくれます
運転士 井口政哉さん

●大ベテランの井口さん、これまでの職歴を教えてください。
1971(昭和46)年に静岡鉄道に入社して、最初はバスの車掌をやりました。バスに同乗して切符を切ったり、バックのとき誘導したりする仕事です。それから当時の慣例に従って自衛隊に4年出向し、戻ってきてから教習を受けて22歳で運転士になりました。2003(平成15)年に静鉄から自宅に近い秋葉バスに転属して、運転士歴は計48年になります。その間、バスは驚くほど進歩しましたね。最近も運転中に急病になったとき緊急停止する「ドライバー異常時対応システム」を導入していただいたり。安全に完璧はないので、ありがたいです。

●どんな点にやりがいや達成感を感じていますか?
運行助役や配車係など本社での仕事もやりましたが、やはり運転士の仕事が楽しいです。森町から袋井まで1時間36分、いろいろな人が乗りますが、顔見知りになることも多く、通学のために乗ってきていた子が、大きくなってお母さんになって子どもと一緒に乗って声をかけてくれたり、孫を見せてくれたお客様もいます。秋葉バスはお客様との近さを感じますね。バスという鉄の塊も好きだけど、やりがいを感じるのはやはり人とのつながりです。

●秋葉バスの良さは何ですか?
地域に密着して地元のお客様に寄り添っていることです。秋葉線の終点の気多というところにバスの方向転換所があるんですが、何年か前からそこを地元のお祭り広場として貸し出したりもしています。これも会社の地域貢献ですね。

「運転士同士の『あの道はああだよね』といった
何気ない雑談が若い運転士の事故防止につながったりします」と井口さん
秋葉バスのお客様は「ありがとうございました」と言うと、みんな「ありがとう」と返してくれて、人の温かさを感じるのだそう

「井口さんの技術と経験に裏付けされた助言や指導に皆が真摯に耳を傾け『運転士の父』とでも言うべき存在です。これからも健康に気を付けて1年でも長く秋葉バスで働いてほしいと考えています」と山田社長。社長からの信頼も厚い井口さんの活躍はまだまだ続きます。

新路線開通やキャッシュレス化など、新しいことに果敢に挑んでいく山田社長に、今力を入れていることを伺いました。

●運転士の負担軽減とお客様の利便性向上を追求
バス運転士の仕事は運転業務だけでなく、「運賃支払い時の確認」や「問い合わせへの対応」「交通渋滞などの説明」「車いすの乗降サポート」「急病者への対応」等、様々な「接客業務」を同時に行うことが他の運輸事業(鉄道、航空、貨物)にはない難易度の高い点です。
加えて、常に運行ダイヤを意識し交通状況に応じて一日中運転するのは大変なストレスを感じる特殊な仕事でもあります。
そんなハードな業務をこなすバス運転士の負担軽減には、安全性能の高いバスの導入、適切な運行ダイヤのほか、できるだけスムーズにお客様が乗降できる環境作りが必要です。そのため「キャッシュレス化」は積極的に進めていくべきと考えています。その一環として「スマホ定期」や「QRコード決済」を導入しました。これは、お客様の利便性向上にもつながります。今後は「クレジットカード決済」機能の追加にも取り組んでいきます。

秋葉バスサービス本社前のバスターミナルには、とても穏やかでゆったりとした時間が流れています。広い空に鳥の声、新旧さまざまな形のバス、笑顔で冗談を交わす運転士の皆さん。時代が変わっても、路線バスのある平穏な風景をずっと存続していくことが、秋葉バスの使命であり、挑戦なのだと思います。

秋葉バスサービス ホームページ
https://www.akihabus.co.jp/

トップに戻る